夏。一平の心は、子どもから少年への微妙なバランスの中で揺れていた。無二の親友兵馬、太平洋もそれぞれの道を歩み始めている。去年の夏、一緒に山に登ろうと約束したまま死んだ佐々先生への思いを胸に三人は夏の早朝、自転車で約束の明神岳へと向かった。「おまえら三人一緒だからやれることもあるんだ」という佐々先生の言葉を思い出しペダルを踏みしめる。しかし、山の天気は変わりやすい。あと少しで山頂だというところで嵐に遭い明神岳を目の前にして引き返さなければならなくなってしまった。佐々先生の親友であり、化石の採集に来ていた町田先生に助けられた三人は、とりあえず近くの洞窟に避難するが、町田先生が村に助けを求めにいっている間、一緒に来てた妻美保の陣痛が始まったのだ。苦しむ美保を目の前に急に心細くなる三人だったがそんな彼らの胸に「三人信じ合って力を合わせれば何だってできる」という佐々先生の言葉がよぎる。彼らは迷い、戸惑いながらも一つの生命を取り上げた。そして、嵐がおさまり、洞窟に光がさし込んできた時、三人は歩きだす。雪の帽子をかぶった赤駒岳を背に小さな旅を終えようとする彼らの頬を夏の終りを告げる風が心地よく通りすぎていったのだった。...
影视行业信息《免责声明》I 违法和不良信息举报电话:4006018900