遠くアルプス連峯を望んで丈なす雑草、苔むし荒れ果てた古城のほとり、そこにある町に住む女学生敦子は、斜陽とは云え名門松平頼治の一人娘で、父は町のために流用した資金が返済されず日夜苦しんでいた。丁度その頃新興財閥にのし上った大沼壮太郎の息子壮平から、敦子を是非にとの縁談話がもち上っていたが、敦子には恋する男がいた。それは壮平の学友の高瀬雪雄であった。雪雄は東京の大学に行っていたが、夏休みは父の勤める大沼ホテルでアルバイトをするかたわら、テニス大会に敦子と共に出場していた。その会場に突然敦子の父の自殺の報がもたらされた。悲嘆にくれる敦子に、壮平の父は、負債の償却を条件に壮平との結婚を迫るのだった。憤然とこれを拒絶した敦子は、城跡で雪雄と愛情を誓い合ったが、翌朝になって、敦子は置手紙を残して何処ともなく姿を消した。今は希望も消えた雪雄を、壮平の妹みね子が慕う...
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