高級洋裁店のお針子加代子は、自分が仕立てるドレスから果しない夢をふくらませる、としごろの乙女だった。ある日加代子は上得意の元伯爵令嬢和美からたのまれて、替え玉としてパーティーに行った。そこで加代子は富沢貿易の御曹子慎一からダンスを申しこまれた、が実は慎一も替え玉の社長付の運転手吾郎であった。そんな二人は互いに後めたさを感じながらも楽しい一時を過した。そんなこととは知らぬ吾郎は翌日和美にデートを申しこんだ。これを知った加代子は、なんとかその場を切り抜けたが、時がたつにつれ、嘘が嘘を生み、息苦しい毎日が続いた。そんなある日加代子の母たねが上京し、加代子はたねをつれて東京見物に出たが、途中社長の用で車を運転する吾郎に会った。吾郎は車が故障したといつわって社長を途中で下すと加代子とたねを連れて東京を案内した。たねはそんな明るい吾郎がすっかり気にいり、安心して家に帰っていった。その夜加代子は吾郎から愛をうちあけられ、とまどいながらも幸福に酔いしれた。だが、ある日吾郎は慎一をたずねてきた和美から、加代子の素性を知り、怒った吾郎は別れる決心をして加代子を呼び出した。しかし何も知らない加代子の幼い嘘にはじめの決心はにぶり、また互いに嘘をかさねるのだった。しかしある日、加代子は和美の替玉として社長の別荘を訪れ、そこで加代子はことのすべてを知った。それから数日、吾郎との想い出の場所にやって来た加代子はそこで、同じ想いの吾郎に会い、二人は互いに真実の姿を打ち明け、明日への希望に胸をおどらせるのだった。
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