勤皇討幕の旗のもと大阪城へ一人でのりこんだ鞍馬天狗は、仕掛だたみの地下牢へ落っこった。天狗を救い出そうと大阪にやって来た杉作と吉兵衛は、濠の橋げたにぶらさがって城の中にしのびこもうとしたが、吉兵衛は見つけられて追跡され、杉作だけがうまく忍びこんだ。暫くするとお兼が通るのが見えたので、後をつけて行くと、地下牢へ入って行き、天狗に「私たちの邪魔をしないのなら逃そう」と話しかけたが拒絶されたので、怒って立ち去った。お兼とすれ違いに牢格子に馳け寄った杉作は、けんめいに鍵をくだいて格子を開いたが、物音におどろいて番卒が押し掛けてきた。天狗は飛び出して敵に斬りかかったが、杉作がピストルを突きつけられているのを見て刀を投げ出した。一方薩摩屋敷のおみわは天狗の安全を祈ろうと神まいりに出掛けた帰り、ムリに土方歳三の家へ連れこまれた。今にも土方に抱きすくめられようとしたときお兼が現われ、大いに怒っておみわを救い出し、逆に天狗を助けることにして二人で大阪へ向かった。翌朝淀川千両松の堤では、近藤勇と薩摩の浪士十名とで決闘が行われていたが、近藤勇の刀の冴えにたちまち勝負は決まってしまった。大阪城へ着いた近藤勇に、杉作は身体の弱った天狗を殺さない様にと必死に頼んだ。近藤の気転で天狗は牢から出ることができた。数日後、京都東寺の五重塔で天狗と近藤勇の果し合いが行われ、激闘の末近藤の剣は地に払い落された。だが今度は命を助けるのは天狗の番であった。何時の日か二人が勝負を決する日もあろう。暫くして駈けつけた杉作、おみわ、お兼、だが既にそこに二人の影はなかった。
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