この頃の井上監督は、自らが脚本を書いてはいなかったようだ。 しかし、江戸川乱歩原作は非常に面白い。 また、1950年代アメリカフィルムノワールのテイストが色濃く出ている。 夜が主な舞台となり、探偵が街を歩きまわり、その探偵は必ずしも正義ではない。 凝ったセットは団地の一室くらいで、あとは簡素であり、じっさい、低予算のBフィルムだったのかもしれない。 フィルムノワール風と言っても、femme fatale は探偵の情婦くらいで、印象が強いのは、新珠三千代や芦川いづみのような貞淑だったり清純風の女であったりする。 一方、男優では、大坂志郎が珍しくヒール役(私立探偵)で熱演している。安部徹と並び、素晴らしいバイプレイヤーである。 三国連太郎のダンディスムもかっこいいが、団地の一室の畳上がるシーンはあまりかっこのよいものではないなぁ。 ところで、ルノワールの作品で「十字路の夜」というのがあるが、きっとその影響が強いのだろう。
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