カストロ髭をたくわえた早川次郎は、拘置所で佐竹と名乗る男から「一カ月だけ身替り社長になって欲しい」と依頼された。サラリーマンの単調な生活にあきていた次郎は、何度も日本脱出を試みていた時であったので、この冒険にとびついた。泉海運というその会社は、横浜屈指の倉庫会社であったが、アメリカに留学中の次男信夫をのぞいて、一家が自動車事故で死亡したのだった。次郎は、信夫の写真を見て、自分と瓜二つなのに驚いた。佐竹は経理課長であったが、使いこみがバレることを極度に恐れていた。翌日の羽田空港から、次郎は信夫の身代りとなった。巧みな次郎の演技は、信夫の婚約者林百合をのぞいて、誰も疑う者はいなかった。だが、次郎はそれ以来危険な目に遭遇した。泉親子の死に方と同じあくどい作為であった。一方クラブ“66”では、沖専務、植草、須田、山下常務、大株主の白井、森中、それに前社長秘書...
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