かつて武田信玄軍と徳川家康軍が激突した三方ケ原の土地を所有する名家・小名木家に、村の若者たちが食糧増産のための開墾を求めてきた。しかしこの地には祟りがあるから決して鍬を入れてはならないという先祖代々の掟があり、一家は困惑。そんな折、小名木家の家宝でもある名刀“関の孫六”を譲ってほしいと、ひとりの軍医がやってきた……。 木下惠介監督作品には珍しい戦国時代の合戦シーンおよび昭和戦中の軍隊演習から始まるこの作品、一見時局に沿った物々しさを装いつつ、その実、古い因習や迷信に振り回される人々の滑稽さを描いた群集劇スタイルのコメディである。木下監督の故郷でもある浜松の三方ケ原と名刀“関の孫六”をモチーフに、当時の社会情勢を背景とした確執や恋愛など複雑怪奇に入り乱れていく人間模様がクライマックスで一気に収束し、見る者に爽やかなカタルシスをもたらす趣向はお見事の一言...
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