旗本深谷新左衛門は、鍼医安川宗順から、高利の金を借りた。だが、その返済を迫られると宗順を斬殺してしまった。深谷家に異変が起ったのは、その翌春からである。新左衛門は、妻とよが宗順の悪夢に憑かれ床につくと、女中おくまを雇った。おくまは、新左衛門と関係ができると奥方然と振舞い、やがて新左衛門の長男新一郎にまで、誘惑の手をのばした。新一郎はこれを苦に出奔。とよの病状は悪化した。新左衛門は病妻のために按摩を呼んだが、その顔は宗順にそっくりだった。それから間もなく、とよの悲鳴で駈けつけた新左衛門は、按摩に斬りかかった。だが、凄まじい形相を残して死んだのは、とよだった。やがて新左衛門が狂死し、深谷家は改易となった。それから数年。質屋下総屋に居候の身となった新一郎は、そこの奉公人はなの誘惑に身を任せ情交を結んだ。その最中、はなは呻き声をあげて、世を去った。彼女こそ、...
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