竹内亮と速水マキの出合いは、新宿デモの敗走と流血の中から生まれた。虚しい抵抗のあと、刑事に追われて逃げまどう亮は、通りすがりの女マキにすがりついた。マキは間近にせまる追跡者の足音を知ると、とっさに亮を抱いて恋人のように唇を重ね、その場の亮を救った。その日以来、亮にはマキの面影が忘れられぬものとなった。しかし、二人の再会は意外に早く出現した。亮の通う青北高校に赴任した女教師がマキだった。だが、マキは亮を無視し、公式通りの授業を続けていった。学生運動に熱中する亮は学園ストの際に、市の有力者である父親の修造が、機動隊導入の立役者であったことを知り深い傷をうけるが、かつて全共闘の闘士であったというマキが、その傷口をいやしてくれるものと、秘かな期待を抱いていた。マキは、年上の女教師にひたむきな青春を賭ける亮をさとすが、体ごとぶつけるような激しさでマキを求める情熱の前に屈し、美しい湖畔の山荘で二人は結ばれる。マキと亮の噂は急速に広がり、それをしった修造は怒り狂い、校長と共に、二人を引きさく策略をたてた。夏休みを利用してマキが帰郷している間、父親に軟禁された亮は、必死でマキの家を訪れたが、あえぬまま姿を消した。亮の家出をマキと結びつけた修造は、マキを“未成年者略取誘拐”として告訴した。新聞をみたマキは、亮とあうためにあの山荘を訪れ、互いに生命を確め合うように激しく抱き合った。しかし町にもどったマキは逮捕され、亮は警察で二人の純粋な愛情を説いたが、父親はマキへの告訴を取り下げなかった。もはや亮に出来る唯一の道は、死をもって抗議することだけだった。やがて釈放されたマキの頬には涙が流れていた。辞表を出したマキは、亮の葬儀に出席し、親族の火を吹くような憎悪の目の中を焼香台に向うが、冷たく焼香を断わる大人たちに対してマキをかばうのは亮と同じ若者たちだった。
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