画商である親友(中山仁)の妻水絵(山本陽子)と青沼に入水心中して一人生き残った画家の流(田村亮)は、再婚した親友の屋敷に招かれるが、新たな妻雨子(山本陽子)は水絵に生き写しだった。さらに夜な夜な水絵の亡霊が流れのもとに現われて心中のやり直しを迫るのだった。雨子を間にはさんで水絵の追憶に囚われた二人の男たち。そして、青沼のほとりに建てられた水絵の墓にはある秘密が隠されていた・・・ 実相寺昭雄が火曜サスペンス枠で撮ったオールセット撮影のビデオドラマだが、凝りに凝った装飾的な映像様式は健在だ。泉鏡花の独特の文体を映像化する企画に実相寺を充てた山口剛プロデューサーの眼力はさすがだ。 山本陽子と田村亮といえば、一時期のテレビドラマでの黄金コンビだが、このヒロインに山本陽子が最適な配役だったかどうかは怪しいところだ。 実相寺組としては、実は重要な役どころの堀内正美や寺田農、原保美、岡村春彦等の面々が顔をそろているのだが、あくまで濃密な三角関係に主眼がおかれている。 今回改めて観なおしてみると、生霊となってまでも青沼の水底に誘う水絵と、流を現世に引き留めるために嫉妬深い画商の遺骸を沼に沈めて水絵の呪いを封じる雨子の対比がはっきりと見えてきて、興味深い脚本であることが確認できた。水絵の生霊は青い照明を浴びて登場し、流に向かって切々と話しかけるので、怪談映画としては成立しないのだが、生と死のあわいを幻想的に描き出す狙いには実相寺の演出はピッタリであった。欲を言えば、もう少し予算を張り込んでフィルム撮りで見てみたかったものである。
影视行业信息《免责声明》I 违法和不良信息举报电话:4006018900