2016年の炎天下の夏の午後、田舎道に迷った私が道を尋ねた老人は、19歳で志願して兵士になった話を語り始めた。唐突な始まりと同じく「相撲中継が始まるので帰ります」とだけ言い残し、話は唐突に終わり老人は去った。いや、去ったのではなく消えたのだ、と陽炎に揺れる町を眺めながら私は思った。そしてこの声は、この老人ひとりの声ではなく、この土地が私に語りかけてきた声だったのではないかと。この経験は、この土地の声を記録しろと私に迫った。そして本作「影の由来」を作らせた。 —手記だけを残し戦死した夫に、届かない手紙を綴る妻。町中に遍在する幽霊たちの声、光と影が織り成す暮らしの風景。かつてこの町に暮らしたすべての人々に供する、一篇の映画詩。— そして本作の完成と同時に、あの老人がこの町から消えたことを知った。
影视行业信息《免责声明》I 违法和不良信息举报电话:4006018900